| JapanMailMedia 035E号から転載。 |
1999年11月12日発行
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JMM [Japan Mail Media] No.035 緊急レポート ■イスラマバードから届けられた山本芳幸氏のレポートを緊急レポートとして 配信します。 ■ 緊急レポート 山本芳幸(在イスラマバード) とうとう始まった。 救急車のサイレンの音が聞こえてきた。外に出ていたドライバーが帰って来た。UNナンバーの車が燃えていた、とみんなに報告する。ウソっ!とは思わなかった。国連制裁決議に抗議する人なんていくらでもいる。抗議しなくてもバカな決議だと思っている人ならもっといっぱいいる。反国連、反アメリカがまた表面に出てきた。国連事務所間で連絡をとりあって集まった情報をまとめると、どうやら5つのテロがあったらしい。 (1)アメリカン・インフォーメーション・センターの横にとめてあった国連ナンバーの車が爆発炎上、(2)サウジ・パク・タワーという国連事務所が密集するビルの近くにとめてあった車が爆発炎上、(3)アメリカ大使館の裏にとめてあった国連ナンバーの車が爆発炎上(この車からミサイル状のものが発射されたという情報もあるが確認できない)、(4)WFP(国連食糧計画)事務所にとめてあった国連ナンバーの車にロケット弾により大破、(5)State Bank of Pakistan (パキスタンの中央銀行)の敷地内にロケット弾が着弾。 どうみても国連とアメリカが狙われたのは明らかなようなだ。それに加えて、ムシャラフ政権をターゲットにしたか。これら5つのテロを結んで一つの像を作ることはできる。しかし、憶測を書くのは止めておこう。 午前11時30分、僕とAdministration Officer は現場を見に行った。WFPは僕のいるオフィスから50mほどしか離れていない。ロケット弾が当たった車のフロンドガラスが溶けていた。車は炎上していなかった。持ち主のLogistics Officer は幸い被弾した時、事務所の中にいた。車の中をのぞくとミネラル・ウォーターのペットボトルが転がっていた。この状況になんか似合わないなと思った。 WFPの事務所からさらに50mくらい離れて、State Bank of Pakistan がある。そこにも行ってみたが中には入れなかった。当たり前か。消防車、警察の車、ジャーナリストの車、そして野次馬であたりはごった返していた。途中アメリカ大使館のベンツが通りかかった。大破したWFP職員の車のところでとまって、一人出てきた。なーんかやばいなあ、早くどっか行った方がいいんじゃないかなあと思いながら、見ていたら警官に二言三言話しかけて、ロケット弾の当たった部分を見て、すぐ立ち去った。ほっとした。 正午、事務所にもどった。所長は全国連事務所の会議に召集されて出かけるところだった。テロ発生から30分後には事件の概要は分かった。45分後にセキュリティの会議が召集された。12時15分、テロ発生1時間後、ジュネーブ本部から電話がかかってきた。どこからかテロの情報を得ていた。これらの時間の経過を書いているのは、専門的に見て、ここまでの国連の動きが早いのか遅いのかを僕は知らないからだ。「すぐに」とか、「だいぶ経ってから」とか、そういう言葉が使いにくい。 午後1時、僕は家に電話した。ちょっと心配であるし。お手伝いさんが出た。妻は?ときくと寝てるという。ああそうか、そうだな、昨日も赤ん坊が朝方まで泣いたり寝たりを繰り返していた。じゃあ、いいと言って電話を切った。 金曜日はちゃんとモスクへ行ってお祈りする人が多い。そのお祈りが昼頃あり、その後デモ行進へと流れるケースがこれまでよくあるパターンだった。家に帰るなら今だ、遅くなったら反米、反国連の自然発生的デモに遭遇するかもしれない。しかし、みんな車は国連ナンバーで色はほとんど白。思いっきりこれが目立つ。このまま街に出ていいものやらどうやら。国連ナンバーをもろにターゲットにしているのだから、やはり躊躇する。なんとなく事務所としての方針が決定しないまま、みんなずるずると仕事を引きずっている。なんでこんな時にと思うけど、それぞれの仕事には必ずデッドラインがあるし、みんなそれぞれいくつものデッドラインに縛られていて、そっちで頭がいっぱいになってる。日本人よりみんな働きもんだと思う。僕はやる気がしなかった。起こるぞ、起こるぞ、とみんなで言っていながら、やはり起こった、そういうテロにとても憂鬱になっていた。これでまたすべての事態がややこしくなる。もう個々の事象に立ち入るのはしんどくて書く気がしないけど、イスラム世界と国際社会の間にコミュニケーションが決定的に欠けている、これをなんとかしないといろんな事件が置き続けるだろうと思う。日本の人はウソだと思うだろうが、僕が見る限り、コミュニケーションを拒絶しているのは、国際社会の方だ。 モハメッド、おれもう帰るよ、まだ仕事してんのか、と僕は言ったが、アハハ、もうちょっとで終わる、もうちょっとで、と言いながらモハメッドはコンピュータから目を離せなかった。カトリーナ、おれもう帰るよ、と言ってみたが、う〜ん、あたし今朝来るの遅かったからなあ、いっぱいすること残っているしなあ、どうしようかなあ、とイスに座ってくるくる回ってる。ダメだ、こりゃ。僕は書きかけの文書をそのまま閉じて、僕は帰る、僕は帰る、僕は帰る、と連呼しながら事務所を出た。 家に向かう道はアメリカン・インフォーメーション・センターの前を通る。ものすごい数の人が集まっていた。警官が野次馬整理をしていたが、どうも手におえない感じだ。爆破された車からまだ黒い煙が上っていた。それを過ぎると今度はサウジ・パク・タワーの前を通りかかった。真っ黒に炎上した車の周りを警官が取り巻き、そのまわりを少し距離をおいて野次馬が囲むように集まっていた。カーステから、Everyone has to die 〜という歌声が聞こえてきた。車の外がスローモーションで動いているように見えた。そこは自分の住む世界とは別の世界であるような気がした。Everyone has to die 〜、誰だ、これは。思い出せない。 山本芳幸(在イスラマバード) ・UN Coordinator's Office for Afghanistan / Programme Manager (国連アフガニスタン調整官事務所 / プログラム・マネージャー) |
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