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クエッタに赴任して最初の1週間は、イスラマバ−ドからリ−ガルセクションの
同僚がミッション(オフィサ−レベルの人の出張のことを大袈裟にこう呼ぶ)に来ていて、毎日12時間休憩なし食事なしで次から次にインタビュ−、会議、会談に走り回り、結局、休日もなく、ホテルに帰っても、また、同僚と二人で食事をしながら、レストランを追い出されるまで、その日の仕事の整理をし、やっと部屋に帰ったら、今度は報告書を書かなければいけないという、ジャパニ−ズビジネスマン的忙しさで、あっという間に過ぎてしまった。気がつくと、僕はひどい下痢で、今までの下痢がパキスタン名物の下痢だと思っていたのが甘い勘違いであることを思い知るはめになった。まったくの水しか出てこなくなり、しかも堪え難い痛さで、熱は出るし、お腹は痛いし、腰や首も痛くなり、悪寒でぶるぶる震えながら、たら−っと汗を流し、一度発作がやってくるとベッドの上でまるまっているしかないという、今迄一度も味わったことのない、とんでもない下痢だった。ジャ−っと一度通過した後、肛門のあまりの痛さに耐えられなくて、すぐにぬるいお湯をはったバスタブに飛び込む。こうすると少しは楽になる。
国連職員はみんなジュネ−ブでメディカル・キットというものを渡される。これ
にはいろんな薬や宇宙食みたいなものから、注射器まで入ってる。もちろん、下痢止めも入っているので、今回の下痢は普通じゃないと思って僕はすぐにそれを飲んだ。
しかし、これが副作用の大集団みたいな薬でとんでもないことになってしまった。確かに強烈に効く。一瞬ピタッと止まる。しかし、飲んだ後でクソ丁寧に英語、フランス語、アラビア語で書かれた説明書を読むと、時々次のような副作用が出ることがあると書いてあり、1、吐き気 2、嘔吐 3、頭痛 4、湿疹 5、口の渇き 6、眠気 と列挙してあった。運悪く、僕はすべてに該当してしまい、ずっとムカムカと気持ち悪いし、便器に座りこみ下痢をしながら吐いてしまうし、頭は割れるように痛いし、背中、腕、脛は湿疹だらけで痒くてイライラして掻き毟ってしまい、脛は血まみれになってしまうし、口はカラカラで次々に何本もスプライトやコ−ラを飲んでしまい、ますます下痢を助長してしまったし、最後に眠気で頭はず−っとぼけた状態になってしまった。これなら、薬を飲まない方がましじゃないか、バカバカしいと思ったけど、仕事を休むわけにいかなかったので、事務所にいる間だけでも下痢を止めるために、結局、この薬と飲み物だけで何にも食べないという異常な生活に突入してしまった。
後で知ったことだけど、この種の下痢、この薬のバカバカしさについては、みんな良く知っていた。パキスタンに赴任すれば誰でもこのひどい下痢に一度見舞われ、たいてい1週間は身動きとれず、休んでしまい(休めばよかった、まったく傍迷惑なミッションだった)、この薬のバカバカしさをたっぷり味わうらしい。薬の話をすると誰もが「ああ、あのキツイやつ」とすぐに了解した。
2週目に入り、薬も止め、一日一回ス−プを飲むようになり、やっと下痢も普通の日本的下痢に戻り(決して止まったわけではない)、湿疹は今だに無くならないけど頭痛も嘔吐も止まり、さあ、家さがしを本格的に始めようと思ったら、いきなり明日からイスラマバ−ドへ出張せよというテレックスが本部から入ってきた。やっと休みがとれると思ったのに、これで2週連続休みが無くなってしまった。まったく、もう。
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