今年から成人の日と体育の日が第2月曜日となり、それをハッピーマンデーなどと呼び、みなで連休をハッピーに過ごす作戦らしい。
そんなことは昨年の暮れも押し迫ったころまで全然知らなかった私であるが、カレンダーにもハッピーマンデーな印がついており、1月10日は赤い字で印刷されている。体育の日は10月9日らしい。こちらも赤い。
数年前の海の日が施行されたときも私は全然知らないでいたのだった。
ハッピーマンデーのことなどすっかり忘れ、遅い朝に目覚めた私はカーテンを開け日光に直撃されていたところ、インターフォンにて来客の呼び出しがあり、誰だ?こんな朝っぱらから、と出てみると宅配便だった。
そろそろ仕事用にお借りする中古のMacが届くころであったので、慌ててパジャマのズボンを脱ぎ捨て、ジーンズに履き替え、上半身までは間に合わなかったので取り敢えず長めのガーディガンをはおり喉元までキュッとファスナーを締め上げて、ハンコウを握って玄関まで走った。もう5時間も前から起きてましたからね、という顔をしてドアを開け、でもあまり見られては先ほど起床したばかりということがバレてしまうので、なるたけ素早くハンコウを押して荷物を受け取りドアを閉めたのだった。ふう、やれやれ。
でも宅配便のおじさんは私が寝起きとは気付かなかったに違いない、と満足しながら大きな段ボール箱を怪力で部屋まで運び、ベリベリとガムテープをひっぺがしながら、Mac登場の瞬間を緊張しながら待ったところ、中から出てきたのは衣類やら何やら意味不明の布類や書籍なのであった。ああ、びっくり。
寝起きであり、思わぬ荷物に呆然としながら、箱に貼ってある伝票を見ると見慣れた住所が記入されており、これは私の住所なのであった。
だが、名前が違う。これは私ではない。本田とある。私の本名は本多である。
この本田さんはお隣りか、そのまた隣りのホンダさん(漢字不明)に違いないと踏んだ私は再び慌ててガムテープで箱を閉じ、中身は全然見ていないというフリをしようと思った。
私が住んでいるマンションは「ほんだ」という家が3軒並んでおり、我が家が一番手前にあるため、ときどき間違えられる。
関係ないけれど以前住んでいたマンションにも3階に同姓の本多さんがいて、やっぱり誤配達されたことが幾度かあり、1階に住んでいた私は階段を上って3階まで荷物を運ばなければならない苦行に耐えていたのであった。
それで話は戻るのだが、とにかくこの荷物を何とかしよう、まずは着替えよう、お化粧もしよう、と思い身を整えた。
そして隣りに荷物を運んだ。幸運にも隣家宛ての荷物であった。慌てていたせいか、伝票の上にガムテープを貼り直してしまった私は、もう開けていないフリをするのは無理だと観念し、そのことを謝罪しながら荷物を渡したのであるが、相手も自分宛ての荷物が間違って配達されたことや、表札を出していないことの負い目や、玄関先に出てきた男性がパジャマ姿であったことの羞恥心などから、私を叱りつけるような行動には出ず、すみませんなどと謝まり、結果われわれはお互いに謝罪し合うという形になった。
そんなこんなですっかり一仕事終えたような気分になった私はベランダに出てタバコを一服していると、先ほど荷物を届けた隣家から声がする。どうも応対に出たパジャマの男性が掃除機をかけている女性に向かって、お隣りに挨拶しろよ、お礼しようよ、なんて発言している様子で、そんな話が耳に飛び込み、私はなぜだか猛烈に恥かしくなり、急いでタバコを消して部屋に戻ったのだった。
それで挨拶やらお礼やらをその後ずーっと待っていたのだが全然来ない。来る気配もなし。
待っているばかりでは退屈なので、もともとある古いMacの中からゲームや、くだらない自作のアイコン集などをフロッピーにコピーして、もうすぐ届くMacに入れてやれいッと思いつき、久しぶりにMacをつないで立ち上げた。
コピーは簡単に済んだのだが、ふとMacというのはどんなマシンだったかな?と思い、文章を打ってみたところ、半角アルファベット文字の出し方をすっかり忘却していることが発覚した。まるで初心者のように分からない。こんな状態では仕事などはこなせぬと焦り、落ち着け落ち着けと呟きながら様々なところをクリックしてゆくうちにできました。これで仕事も安心です。
それから古いMacに封印されたままのゲームをしたり、古いメールを読み返したりして遊んだ。
一人でこれほどのハイスコアを出していたとは閑人な!とか、ああ馬鹿なことを書いている、その上それをメールで送っている、と思うと顔が熱くなり、恥かしいのでシステムを終了した。
そんなことをしているうちに私はある問題に直面した。
月曜日だ。そう、ハッピーマンデーを思い出したのだった。
だがもう午後で夕方も近い感じに陽射しが傾いている。このままではせっかくのハッピーマンデーがハッピーに過ごせない。次のハッピーな月曜日は9ヶ月も先である。
気持ちが焦る。実家の猫でもからかいに行くか、と電話をかけてみたが留守である。私のハッピーがどんどんと遠ざかるような心持になった。隣家の挨拶やらお礼やらも来そうにない。
大変だぁ! 月曜日が終わってしまう。終わってしまう前に何とかしなければ、と思ったが何をしたものか見当もつかないのだった。
平静を装い、近所のスーパーで好物の子持ちししゃもを購入し、それを焼いたところ良い塩梅に焼き上がり美味かった。ああ、ハッピー。取り敢えずOK!